石川県国民健康保険審査会殿 反論書

平成28年8月 8日

石川県国民健康保険審査会 殿

審査請求人

住所  石川県金沢市○○○丁目○○番地○

氏名  ○○ ○○          印

代理人

住所 石川県○○○○○丁目○番地

氏名  税理士 ○○○        印

反 論 書

金沢市長の平成28年7月25日付け収医第216号で提出した弁明書に対し、下記のとおり反論します。

1.審査請求に係る処分

審査請求人 ○○○○に対し、金沢市長が平成27年9月18日付けで行った不動産差押処分に対する審査請求。

2.反論の趣旨

「処分庁の処分に違法・不法行為あるいは法令上の適用誤りがあった」旨の裁決を求める。

3.反論の理由

①原告適格について

金沢市保険局保健課(以下「処分庁甲」という)は、平成27年9月18日付不動産差押処分は27年12月4日付で、滞納保険料が全額納付された結果解除され、差押不動産は売買により第三者に所有権移転されているため、審査請求人(以下「請求人」という)に行政事件訴訟法第9条第1項の規定に基づく原告適格がない旨弁明する。

しかし、当該差押処分により請求人は、差押不動産の売買において処分に付随する効果として値下げを余儀なされ損害を受けた。

請求人は当該差押処分に違法・不法行為あるいは法令の適用誤りがあれば、民法709条により損害賠償請求権を取得することになり、行政事件訴訟法第9条第1項に基つき法律上の利益を有し原告適格がある。

②処分庁とは何か

処分庁は、金沢市総務局税務課(以下「処分庁乙」という)と処分庁甲はあたかも別の独立した執行機関であるかのように弁明する。

しかし、処分庁乙が平成27年8月6日付(発税務第1468号)で執行した事業用定期借地契約に基づく請求人の有する総額46,789,804円(296,138円×158ヶ月)に対する処分庁乙の債権差押処分(以下「処分A」という)と処分庁甲が平成27年9月18日付(発医第6214号)で執行した不動産差押(以下「処分B」という)の処分庁はいずれも金沢市長 山野之義であり平成28年7月25日付弁明書(医収第216号)の処分庁も金沢市長 山野之義である。

したがって、処分A及び処分Bの本件審査請求に関する処分庁は、いずれも金沢市長 山野之義であり、同一人である。

③本件処分の違法性

すでに処分庁乙が処分Aを行っており、処分庁甲は差押可能な財産は処分Bに係る土地のみであり、処分Bは必要を超えた不動産差押に該当しない旨弁明する。

しかし、処分庁乙が行った処分Aの差押は、債権総額46,789,804円に対し滞納額3,071,300円(延滞金含む)を差押えている(別添1)ものであり、処分庁甲の滞納額は、処分Bの差押時点では1,014,509円(別添2)にすぎず、処分庁甲は賃料債権に対して未だ十分に差押の余地があった。

また請求人が、不動産を譲渡しても差押債権は消滅しないにもかかわらず、処分庁乙は処分庁甲の平成27年10月20日処分B不動産にさらに参加差押(別添3)を行った。

当然に処分庁甲・乙は金沢市長同一人である以上、処分庁乙は処分Aの内容を不知だったとはいえない。

請求人は平成27年8月24日処分庁乙に、処分B物件の売買交渉進行中である旨を伝え、処分庁乙の指示で平成27年11月末までに全額納付する「未納の市民税債務の承認及び納付誓約書」(別添4)を提出し、売却代金で完納を誓約しており、当該物件は売買交渉進行中にもかかわらず、処分庁甲は処分Bを実行した。

売買契約進行中の価格交渉に、処分庁甲が処分Bを行った影響は皆無と言い切れず、処分庁甲は市民の自己納付の努力と権利を著しく阻害したものである。

仮に、処分庁甲及び処分庁乙が別の執行機関であったとしても、処分庁甲は滞納金額の回収について、処分庁乙に対して処分Aに係る交付請求することで足り、処分Bの執行は不要であったものである。

また、請求人は野々市市○○○○○○○○に土地(別添5)を所有している事実をすでに処分庁乙に通知していることから、処分庁甲は差押可能な財産は処分Bに係る土地のみであったとはいえない。

処分庁甲は処分庁乙の処分Aの内容について、あるいは請求人の所有する土地について不知であったとすれば、処分庁甲は徴収法第5章第6節第2款「財産調査」を行っていないことになる。さらに処分庁甲は、処分Bの執行に関して請求人に質問検査権を行使することもなかった。

これは当該処分庁の注意義務に違反しているといえるものである。

さらに、財産差押えで財産の選択は、国税徴収法基本通達第5章第1節第1款第47条関係第17項の規定に基づき、徴収職員の裁量によるとして、賃料の支払い請求権でなく、不動産を差押えたとしても必要を超えた差押に該当しない旨弁明する。

しかし、国税徴収法基本通達第5章第1節第1款第47条関係第17条の規定は、滞納者の財産調査をした上で差押さえる財産の選択にあったっての基準ないし留意事項について定めたものである。

差押の対象としてどのような財産を選択するかは、法令の定めはなく、徴収職員の合理的判断(裁量)に委ねられていると解されるが(昭和34.4.17仙台高判・行集第10巻1529頁)一方、差押さえるべき財産の選択は、第三者の権利の尊重・滞納者の生活または事業の維持継続を配慮した上で徴税上の便宜を考慮して行うこと。また、滞納者からの申し出があるときは、徴収の確保に支障がない限りその申し出に係る財産を差押さえることが妥当であると解されるのであって、処分庁が弁明するように徴収職員に無制限の裁量をあたえ請求人に属する財産であれば「何を」差押さえても適法であると解すべきではない。

処分庁は、請求人より財産の申告、差押財産の申出がなかった旨弁明するかもしれないが、行政通達は、行政内の内部規律であってなんら請求人を拘束するものではない。逆に、処分庁は、滞納者とよく相談し合理的な判断を行うよう定められているのである。

もし、処分庁がこの通達を以て徴税職員にはどの財産を差押さえるかについて無条件・無原則に裁量があたえられていると解するならば、常軌を逸しているとしか言いようがない。

また国税徴収法48条は著しく超過した差押及び無益な差押の禁止を定めている。

処分庁甲の処分Bが超過差押であるとの指摘に対し、処分庁甲は金沢市内を調査したがそれ以外に差押える財産のみであり、超過差押について必要を超えた差押に該当しないと主張していた。

しかし、処分庁甲が行った処分A土地は、320.64坪は、平成27年11月17日坪当たり137,225円で当初想定した総額及び単価交渉の主導権を失い、希望額を大きく下回った。総額4,400万円余(別添6)で売買契約が成立、引渡しの平成27年12月4日に処分庁甲及び処分庁乙は代金決済に立ち合い、滞納債権を相殺し所有権移転決済を行なった。

処分庁甲及び処分庁乙の一方的な処分は請求人に回復困難な損害を与えるもので、売買契約中の価格決定に影響は無視できない。

また不服申し立て又は訴訟の継続中は滞納処分による換価は、回復困難な損害を与えるため原則できないとされている。

この処分庁甲の超過差押の実態と矛盾に対して処分庁甲は、個人情報のため係が異なり、内部で実態を知り得ることがない旨の回答をしている。

②で述べたとおり、処分庁が同一であり不知は許されず、また調査を行っていない。

処分庁乙は、処分庁甲が行った処分Bの不動産にさらに、平成27年10月20日に無益な参加差押を行っているものである。

結果、これは処分庁甲及び処分庁乙は、国税徴収法48条の超過差押を行った説明責任を十分果たしているといえないのである。

処分庁甲及び処分庁乙は、問題解決に向けた個人の努力に対し十分な主張を良く聞くべきであり、処分庁の甲・乙は法の趣旨に従う行政ではない。金沢市民の主張を無視した安易で一方的なご都合主義の行政執行ではないのか。

さらに処分庁の金沢市は情報を共有せず、徴収法の財産調査義務を果たしていない。

審査請求人は、当該差押処分に不法行為或いは法令上の適用誤りがあれば、処分庁に対し損害賠償請求権を取得することとなるので、法律上の利益を有し原告適格があるものである。

添付書類

1、乙処分庁が行った差押調書

2、甲処分庁が行った差押調書

3、乙処分庁が行った参加差押調書

4、乙処分庁に提出した「市民税債務の承認及び誓約書」

5、野々市市に所有の不動産登記簿

6、平成27年分所得税確定申告(譲渡代金に固定資産税決済金含む)

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