平成31年度(2019年度)税制改正のあらまし(中小企業・小規模企業者関係)

1 中小企業者等の法人税率の特例の延長

中小企業者等の法人税率は、年800万円以下の所得金額について15%に軽減されていますが、この特例措置の適用期限が令和3年(2021年)3月31日まで2年延長されました(措法42の3の2、68の8関係)。

対象 本則税制 租特税率
大法人(資本金1億円超の法人) 所得区分なし 23.2%
中小法人(資本金1億円以下の法人) 年800万円超の所得金額 23.2%
年800万円以下の所得金額 19% 15%

2 中小企業投資促進税制等の見直し

中小企業等の設備投資を支援する税制措置として、(1)中小企業経営強化税制、(2)中小企業投資促進税制、(3)商業・サービス業・農林水産活性化税制がありますが、いずれも適用期限が2年延長されるとともに、中小企業経営強化税制では対象設備の明確化、商業・サービス業・農林水産業活性化税制では適用要件の追加、の見直しが行われています(措法10の3.10の5の2~3、42の6、42の12の3~4、68の11、68の15の4~5)。

(1) 中小企業経営強化税制

中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき中小企業者等が特定経営力向上設備等の取得等をした場合に、即時償却又は10%(資本金3,000万円超1億円以下の中小企業者等は7%)の税額控除を選択適用できる制度です。

【改正】

適用期限が令和3年(2021年)3月31日まで2年延長されました。

また、適用対象となる設備のうち、建物附属設備(60万円以上)では工場等の休憩室等に設置される冷暖房設備、器具・備品(30万円以上)では作業場等に設置されるテレワーク用のパソコン機器等など、担当省庁がQ&A集を今後公表するなどして、働き方改革に資する対象設備を明確にします。ただし、対象設備は生産等活動の用に直接供される工場や店舗、作業場等に設置されるものに限られることとなります。

中小企業経営強化税制の概要

類型 生産性向上設備(A類型) 収益力強化設備(B類型)
要件 ①経営強化法の認定
②生産性が旧モデル比年平均1%以上改善する設備
①経営強化法の認定
②投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備
対象設備 ◆機械・装置(160万円以上)
◆測定工具及び検査工具(30万円以上)
◆器具・備品(30万円以上)
 (試験・測定機器、冷凍陳列棚など)
◆建物附属設備(60万円以上)
 (ボイラー、LED証明、空調など)
◆ソフトウェア(70万円以上)
 (情報を収集・分析・指示する機能)
◆機械・装置(160万円以上)
◆工具(30万円以上)
◆器具備品(30万円以上)
◆建物附属設備(60万円以上)
◆ソフトウェア(70万円以上)
確認者 工業会等 経済産業局
その他
要件
生産等設備を構成するものであること※/国内への投資であること/中古資産・貸付資産でないこと、等
税制措置 即時償却又は7%税額控除(資本金3千万円以下もしくは個人事業主は10%)
※事業の用に直接供される設備(生産等設備)が対象。例えば事務用器具備品、本店、寄宿舎等に係る建物附属設備等は対象外

(2) 中小企業投資促進税制

下表に掲げる一定の機械装置等の対象設備を取得等した場合、取得価格の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できる制度です。

税額控除は資本金3,000万円以下の法人及び個人事業主のみで、その事業年度の法人税額又は所得金額の20%までが上限となりますが、平成29年度改正により、中小企業経営強化税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制と合わせて20%が上限となっています。

また、特別償却において、限度額まで償却費を計上しなかった場合の償却不足額、及び税額控除において税額控除限度額を超える金額は、翌事業年度に繰り越すことができます。

【改正】

制度内容はそのままで、適用期限が令和3年(2021年)3月31日まで2年延長されました。

中小企業投資促進税制の対象設備

設備 要件
機械装置 1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの
測定工具・検査工具 1台又は1基の取得価額が120万円以上のもの、1台30万円以上かつ複数合計120万円以上
一定のソフトウェア 一のソフトウェアの取得価額が70万円以上のもの、複数合計70万円以上
※複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除く
普通貨物自動車 車両総重量3.5t以上
内航船舶 全て(取得価額の75%が対象)

(3) 商業・サービス業・農林水産業活性化税制

商業・サービス業等を営む中小企業者等が経営改善指導等に基づき、1台又は1基の取得価額が30万円以上の「器具備品」、一の取得価額が60万円以上の「建物附属設備」を取得や製作等した場合に、取得価格の30%の特別償却又は7%の税額控除が選択適用できる制度です。

中小企業投資促進税制と同様に、税額控除は資本金3,000万円以下の法人及び個人事業主のみで、その事業年度の法人税額又は所得金額の20%までが上限となりますが、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制と合わせて20%が上限です。特別償却で限度額まで償却費を計上しなかった場合や、税額控除で税額控除限度額を超える金額は、翌事業年度に繰り越せます。

適用対象者は、認定経営革新等支援機関など経営改善指導等を行う機関から、経営の改善に関する指導及び助言を受けた旨を明らかにする書類の交付を受けた中小企業者等で、経営の改善に資する資産として、経営改善指導助言書類に記載された一定の器具及び備品並びに建物附属設備が対象設備となります。

【改正】

適用期限が令和3年(2021年)3月31日まで2年延長されました。

また、消費税率引上げを見据え、商業・サービス業等を営む中小企業者等の設備投資を引き続き促進する観点から、税制措置の有効性を高めるため、投資を含む経営改善により「売上高又は営業利益が1年間で2%以上向上すること」が見込まれることについて、認定経営革新等支援機関など経営改善指導等を行う機関の確認を受けることが、適用要件に追加されています。

経営改善指導等に基づく設備投資
【活性化に資する設備の例】
<飲食店の例>
・「画像識別機能付きPOSレジ」を導入し、レジ精算の効率化、接客サービスの向上を実現。
・POS連携により、売れ筋商品を把握し、売上の向上につながる。
<介護業の例>
・「介護用浴槽」を導入し、大幅な効率化により生産性が向上。
・介護従事者の負担も減少し、離職率も低下。

3 みなし大企業の範囲の見直し

「大規模法人」に、大法人(資本金5億円以上等の法人)の100%子法人、100%グループ内の複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人が追加されました。これにより、中小企業投資促進税制など中小企業優遇税制での「中小企業者」の範囲が縮小されることとなります。

平成31年(2019年)4月1日から適用されます。

4 事業承継ファンドから出資を受けた中小企業の特例

中小企業の大きな課題である事業承継を事業承継ファンドを通じて一層促進するため、中小企業等経営強化法に基づく認定を受けた事業承継ファンドを通じて中小機構から出資を受けた場合には、中小機構出資分を大企業保有分と評価しない特例措置が設けられました。

〔対象となる中小企業税制〕
  • 中小企業経営強化税制
  • 中小企業投資促進税制
  • 商業・サービス業・農林水産業活性化税制
  • 被災代替資産等の特別償却
  • 中小企業防災・減災投資促進税制

平成31年(2019年)4月1日から、対象となる中小企業税制の適用期限に準ずることとなります。

5 中小企業防災・減災投資促進税制の創設

中小企業防災・減災投資促進税制の対象者は、中小企業等経営強化法改正を前提とする「事業継続力強化計画」等の認定を受けた中小企業・小規模事業者です。

中小企業が単独で取り組む場合には「事業継続力強化計画」、複数の中小企業が連携して取り組む場合には「連携事業継続力強化計画」を、経済産業大臣が策定・提示する防災・減災対策に関する基本方針に基づいて作成します。

税制措置の適用対象となる設備は、自家発電機や排水ポンプなどの機械装置(100万円以上)、制振・免震ラックや衛星電話などの器具・備品(30万円以上)、止水板・防火シャッター・排煙設備などの建物附属設備(60万円以上)。これらの対象設備を取得等して事業の用に供した場合には、、その取得価額の20%の特別償却ができます。

中小企業等経営強化法の改正法の施行日から令和3年(2021年)3月31日の間の取得等について適用となります。

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