アベノミックスの実態・アダムスミス 事務所便り2016年6月21日(火)No396

アベノミックスの実態

「輸出が増えない理由」について、アベノミクスが始まった当初から、経済学者の多くが円安がもたらす「Jカーブ効果」理論を支持していました。

「Jカーブ効果」とは、円安により輸入価格が上昇し、一時的に貿易赤字が拡大しても、円安による輸出価格低下で輸出数量が徐々に増加し、最終的に貿易収支も改善するという理論のことをいいます。

現在の「国内消費の冷え込み」は、円安を追い風にして企業収益が拡大したにもかかわらず、安倍政権が期待していたようにGDPがなかなか増えていない原因は、円安により企業収益が増えた分だけ、輸入インフレにより家計の可処分所得が減ってしまっているからであります。

その結果として、実質賃金の持続的な下落が進んでしまい、GDPの6割超を占める個人消費が大幅に落ち込んでしまったのです。

正直、民主党政権時代の経済政策もひどかったのですが、それでもGDP成長率は2010年~2012年の3年間平均で1・7%のプラスで推移していました。

これに対して、GDPを最重要指標としていた安倍政権下で、2013年~2015年の3年間平均でわず0・6%しか成長していません。消費増税の駆け込み消費を除いたら、3年間平均でマイナス成長に陥ってしまうほどアベ政権が悪かったのです。

さらに、実質賃金の推移で振り返ると、民主党政権下の2010年が1・3%増、2011年が0・1%増、2012年が0・9%減となり、3年間の累計では0・5%増となっています。

これに対して、安倍政権下の2013年が0・9%減、2014年が2.8%減、2015年が0・9%減となり、3年間の累計では驚きの4・6%も減少しているのです。

要するに、2012年~2015年の実質賃金の下落率は、リーマン・ショックの前後の期間をアベ政権が凌駕していたというわけで、伊勢志摩サミットの発言、リーマンショックに似た状況はアベ政権だけです。

実質賃金の調査についても留意すべきは、従業員5人未満の事業所が調査の対象となっていないということです。端的にいうと、最も経済的な苦境にある零細企業の実態は、実質賃金の調査に反映されていないのです。

実際に経済統計では、絶対的多数で最も経済的に弱い層の調査が、反映されない致命的な問題があります。

どんなに自画自賛をしても実態が現実です。どうも舛添氏と、どこかが共通している気がします・・?

アダムスミス

18世紀のスコットランド生まれで哲学者で経済学者です。教科書の「国富論」で有名ですが、その前に「道徳感情論」を書いています。

経済学者として知られていますが、哲学者であります。

翻訳者によって微妙に読後感が異なりますが、馴染みやすい日経BP社の「道徳感情論」は絶版になっています。

スミスはお金は愛玩物のようなもので、永遠に心の平静をもたらしてくれる訳ではない。

幸福とは心の平静なのであると示しています。

健康で負債がなく、自分の良心に恥じることのない人が、本当にお金以上に大切なものを持つている。

富裕な人々、有力な人々に感嘆し、ほとんど崇拝し、そして貧乏で卑しい状態にあるひとびとを、軽蔑し少なくとも無視するというこの性向は、諸身分の区別と社会の秩序を確立するものにも維持するものにも、ともに必要であるとはいえ、同時にわれわれの道徳的諸感情の腐敗の、大きなそしてもっとも普遍的な、原因である。

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